子どもたちの教育に熱心な先生方ほど、子どもたちに「教室では得られない体験学習をさせてあげたい」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。教育には、教室で知識を学ぶ方法もあります。一方で、実体験から学ぶ経験学習も非常に大切です。
しかし、教育に熱心な先生方であればあるほど、日常の忙しさに、そういった企画が難しいとお感じではありませんか? 体験学習に対する想いはあっても、縁もゆかりもない地域の情報を調べ、本当に効果があるのかを検証し、そのための下調べをして、自分で手配まで行うのは、容易なことではありません。
妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会では、忙しい先生方に変わって、教育体験旅行や体験学習ツアーの企画、地域側のコーディネートを行っています。小・中・高校、大学など、生徒・学生のみなさんを中心に、農業や野外活動など妙高市内における「地域ならでは」の体験や、農泊・民泊といった形での地域交流を通じて、子どもたちに学びの機会を提供しています。
2022年2月19日(土)~20日(日)にかけて、雪国体験・農家民宿ツアーを開催しました。今回参加いただいたのは、小・中学生の計4名です。
この記事は、そのレポートです。
妙高の体験学習で子どもたちが自発的に変化する2つの理由
まず、妙高の体験が、子どもたちの教育にどんなメリットがあるのか、なぜ、変化するのかについてお話します。
妙高市は、自然がとても豊かな地域です。ご来訪いただくと、子どもたちは教室では学ぶことができない、非日常体験をすることになります。そして、深い気づきや学びを得ることになります。
なぜ、深い気づきや学びを得ることができるのか? その理由は、大きく分けて2つあります。
1つは、自然や教育に精通した「専門家の関わり」です。妙高市には、体験学習を通じて子どもたちの自立を促進する教育施設「国立妙高青少年自然の家」をはじめ、学校やさまざまな教育団体の受け入れ経験豊富で、専門的な知識を有した人や団体が数多く存在しています。森林や火山など、妙高の自然環境を生かした体験学習プログラムは、これらの専門家と協力しながらつくっています。
もう1つは、「地域住民との交流」です。妙高市は、多い時には3メートルほどの雪が積もる豪雪地帯です。妙高山がもたらす雪の恵みは、スキーをはじめとした観光資源です。一方、雪国のくらしや農業は、必ずしも快適なことばかりではありません。ときには、厳しい環境にさらされることもあります。その中で生活するためには、地域住民同士の協力やさまざまな知恵が欠かせません。農家民泊によって、地域住民と同じ時間を過ごす。そして、話を聞く。そこから、子どもたちはさまざまな気づきや発見を得ることができます。また、集団で宿泊することは、人間関係づくりにもなります。
このように、「専門家の関わり」と「地域住民との交流」を通じて、子どもたちは教室では得ることのできない「深い学び」を経験するのです。
体験学習により、子どもたちに起こる自発的な行動の変化
妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会では、教育体験旅行をはじめ、これまで1万人以上、多くの学校や子どもたちを受け入れてきました。そして、数日の体験学習でも、初日と最終日では子どもたちの顔つきが変わる姿をたくさん見てきました。
また、学校の先生や親御さんからは、「家では全然話をしなかった子が、話をたくさんするようになった」「いままで、手伝いをしなかった子が、手伝いをするようになった」のように「行動が変化した」という声を伺っています。
なぜ、短期間でも子どもたちの行動が変わるのか。私たちの意見では、次のようなことがその理由ではないかと考えています。
- 「家族ではない」が「家族のような場」に宿泊するため、「手伝いをしなくてはいけない」「自分のことは自分で」という気持ちが芽生える
- 家庭から離れることで、今までしてもらっていた「当たり前」が、「当たり前ではなかった」ことに気づく
- 家族の場合、声に出さなくても「気持ちを汲んでもらえる」が、声を発しないと届かない環境に入ることで、「自分から伝える」ことの大切さを知る
- 都市部では核家族が主体だが、地方では「お互いに協力する」文化が残っている(協力しないと生活できない)ため、助け合いや思いやりの大切さに気づく
- 大変なことでも、みんなでやると楽しいことが分かる
そこにあるのは、理屈を言葉で伝える「知識」ではありません。農業や雪国という、豊かさをもたらしながら、厳しくもある環境の中で、近隣住民と助け合い、思いやり、工夫しながら暮らしてきた生活の「知恵」です。やさしさやあたたかさが人柄に滲み出る地域住民との貴重な体験学習によって、子どもたちの心が揺さぶられる姿を、多くの先生方、親御さんが実感されています。
妙高 雪国体験 学習ツアーの工程
今回は、次のような工程でツアーを実施しました。
■1日目
11:30 国立妙高青少年自然の家着
11:35 オリエンテーション
12:00 昼食(バイキング)
13:00 雪遊び体験、雪の学習
15:45 農家民宿へ
16:30 農家民宿着。ごあいさつ
16:50 夕食づくり、入浴、受け入れ家庭での懇談
21:00 就寝準備
■2日目
7:00 起床
受け入れ家庭にて朝食の準備、朝食、布団の片付けなど
9:00 スゲ細工
11:00 農業体験
11:30 昼食
12:00 振り返り
13:00 プログラム終了
ここからは、写真とともに、その模様をご紹介しましょう。
ツアーの模様
1日目 13:00~ 国立妙高青少年自然の家でスノーシュー
16:30~ 農家民宿に到着
16:50~ 夕食(笹ずし)づくり
2日目 9:00~ スゲ細工
11:00 農業体験
泰男さんから、冬の野菜づくりについて教わります。「燃料費などを考えると、なかなか難しい」という実際のお話が印象的でした。
参加した子どもたちと関係者の声
おわりに
今回の農家民泊ツアーでは、子どもたちが「妙高ならでは」「地域ならでは」の体験を通じて、教室では学ぶことができない学びについて体験していただきました。
子どもたちが、「知識」ではなく、地域内での体験や、地域の方々との交流を通じて得た「知恵」を、これからの生活に生かしていただけたらいいなと思っています。子どもたちの成長を実感できる場をご一緒することが、私たちのよろこびです。